時間学入門

時間とはいったい何か。私たちはそれをどのように認識しているのか。大いなる時間の謎に挑むさまざまな研究者の研究をご紹介します。

時間学入門#07暦あれこれ 東西の暦
陰陽寮で天文と暦を管掌
イメージ暦は、移り変わる季節を正しく知るための指標であると同時に、権力の象徴でもありました。実際に、中国では、「観象授時(天象を観て、時を民に授く)」が支配者のやるべきことであるとされていました。つまり、中国で使われている暦を使うことは、時の皇帝への服従を意味するものだったのです。 そこで日本では、中国からの文化的な影響を受けつつも、その属国ではなく独立した国としての地位を貫くため、独自の元号をつくり、日本ならではの暦法の確立に向けて、各時代の人々が奔走しました。
時間学入門#06暦あれこれ 東西の暦
月の満ち欠けをベースにした東洋の「太陰太陽暦」
イメージ東洋でもっとも古い暦とされているのは、古代中国の殷(いん)の時代(紀元前17世紀頃~紀元前1046年)の遺跡から出土した、月名と干支を刻んだ甲骨文字だとされています。この暦の原型というべきものは、13月の表記があり、月の満ち欠けを基本とする太陰太陽暦だったようです。 同じく中国で、暦が明確な記録として史書にも載せられるのは、漢の時代からです。「太初暦(たいしょれき)」は漢の太初元(紀元前104)年~後漢の元和元(84)年の188年間にわたって使われています。
時間学入門#05時間は分割できるか
イメージ「アキレスと亀」というお話をご存知でしょうか。これは古代ギリシアの哲学者ゼノン(前490年頃~前430年頃の考えたパラドックスで、こんな内容です。 ギリシア神話に登場する俊足の英雄アキレスが、あるとき亀と競走することになりました。といっても両者の走力の差は歴然なので、ハンデとして、亀はアキレスよりもゴールに近い地点X0からスタートすることにします。時刻T0に両者はスタート。アキレスは自慢の俊足を飛ばして、時刻T1には亀のスタートした地点X0に到達しました。そのとき亀は少し進んでX1の地点。つづいてアキレスがX1の地点に到達した時刻T2には亀もまた少し進んでX2に。アキレスがそのX2に到達した時刻T3には、またまた亀は少し先のX3に……。アキレスが亀に追いつくためには、その前まで亀がいた地点に到達する必要がありますが、その間に亀は少し先に進むので、アキレスはいつまでたっても亀に追いつけないというのです。
時間学入門#04物理学と時間
イメージ時間とは何か、という問いに物理学の視点から最もシンプルに答えるとしたら、それは「運動を表すパラメーター(変数)である」ということになると思います。野球のピッチャーが投げるボールの運動を例にとると、ボールはある時間T(1)にピッチャーの手を離れ、T(2)にバッターの前を通過し、T(3)にキャッチャーのミットにおさまる、といった具合です。これを一般化すると、「ある時間T(X)には、ボールは必ず特定の位置Xにある」ということができます。当たり前といえば当たり前ですよね。
時間学入門#03暦に秘められた歴史
イメージ今日が何月何日かを、みなさんは普段、何で確認しますか。カレンダー、手帳、腕時計、スマートフォンという方も多いことでしょう。私たちの社会にとって暦(こよみ)は、あまりにもあって当然の存在です。しかしそれは言うまでもなく、水や空気のように地球上に元々あったものではありません。では、人類はなぜ、暦をつくりだしたのでしょうか。
時間学入門#02「今」とは何か ―道元禅の時間理解―
イメージ私たちの日常にはいろいろな「今」があります。動画やゲームに夢中になって、ふと、「今何時だろう?」と思うときの「今」。学生時代の写真の中に懐かしい顔を見つけて、「あいつ、今なにやってるんだろう?」とつぶやくときの「今」。得意先にメールする書類をすっかり忘れていて、電話で「今送ります!」と言うときの「今」。よく見るとこの3つの「今」は、指している時間の幅や意味合いが微妙に異なっていることに気がつくでしょう。どうやら「今」は次から次へ、ただ機械的に流れていくものではないようです。それでは「今」とはいったい何なのでしょうか。日本曹洞宗の開祖 道元(1200-1253)は、「すべての今には時間の全体像が内包されている」と説きます。頭の中に「?」が浮かんだことと思いますが、少しだけ我慢してお付き合いください。
時間学入門#01「感じられる時間」は、なぜ変化するのか
イメージ遊んでいるときの1時間はあっという間なのに、退屈な会議の1時間は永遠のように思える。子どもの頃には長かった1年が、大人になるとみるみる過ぎてゆく。時間に関するこんな体験は、きっと誰にでも心当たりがあるのではないでしょうか。このことは、私たち一人ひとりの「感じられる時間」が、時計によって刻まれる物理的時間とは異なる性質をもつことを意味しています。「感じられる時間」に影響を与える要因はいくつかありますが、まずは「時間経過に向けられる注意」についてご説明しましょう。

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