人間と時間

#10

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生命はどう持続しているのか

 あなたが応援しているチームのことを思い浮かべてみてほしい。野球でも、サッカーでも、アイドルグループでもいい。そのチームを好きな理由は何だろう。「好きな選手やメンバーがいるから」というのは、ひとつ、ありそうな答えだ。しかしどんな選手もいつかは引退するし、場合によっては別のチームから嫌いな選手が加入してくることもある。それでも私たちは、ふつう、そのチームのファンをやめることはない。ファンとはいったい何なのか、というのは置いといて、このチームで起きているのと同じようなことが、実は私たちの身体でも起きている。

人間の身体は37兆個もの細胞によって構成されているが、その「メンバー」は決して固定されているわけではない。細胞は食事によって摂取されたアミノ酸から新たなタンパク質を合成するのと同時に、自分自身をつくっているタンパク質を分解して体外へと排出しているのだ。

なぜ合成と分解を同時に行っているのか? この問いはある意味で愚問である。なぜなら、合成と分解との動的な平衡状態が「生きている」ということであり、生命とはそのバランスの上に立つ「効果」であるからだ。(福岡伸一『新版 動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』小学館 P80)

私たちは普段、自分が自分であることを疑わない。昨日の自分はもちろん、1年前、3年前、10年前の自分も、基本的にはいまと「同じ」自分だと考える。しかし、身体を構成する細胞は常に分解と合成を繰り返していて、数年も経つとすっかり入れ替わってしまうらしい。ということは、もしも人間を37兆個の部品からなる機械だと考えるなら、今の自分と10年前の自分はまったくの「別人」だということになる。果たしてそうだろうか。

(…)確かに生命はどんどん分解していくと部品になる。(…)その部品(タンパク質)は今ではどれも試験管内で合成することができる。(…)では、それを機械のように組み合わせれば、生命体となるだろうか。否である。合成した二万数千種の部品を混ぜ合わせても、そこには生命は立ち上がらない。それはどこまで行ってもミックス・ジュースでしかない。(P145-146)

では生命が立ち上がるには、そして、今の自分が10年前の自分と「同じ」であるためには、何が必要なのだろう。生命現象とは、機械とは違い、部分の総和以上のものであるらしい。つまり、組み上げられた部品だけでなく、それにプラスαがあって、はじめて生命となるのだ。

プラスαとは、端的に言えば、エネルギーと情報の出入りのことである。(…)パーツとパーツのあいだには、エネルギーと情報がやりとりされている。(…)生命現象のすべてはエネルギーと情報が織りなすその「効果」のほうにある。(P146-147)

その「効果」のカギを握るのが時間、より正確にはタイミングであるという。生命が立ち上がり、それが持続していくためには、身体を構成する部品だけではなく、それらがいつ、どんな順序で出現し、どのように連携していくかが重要なのだ。

部品は多数タイミングよく集まって初めて一つの機能を発揮する。(P148)

ちょうど、何本ものパスがつながって、一つの鮮やかなゴールが生まれるように。

新しい年がはじまって一カ月。あなたの身体でも、今年生まれの細胞が、かなりの数になってきたことだろう。しかし、「かれら」が活躍できるのは、しかるべきタイミングで、エネルギーと情報を「旧メンバー」から引き継いだからに他ならない。生命への畏怖と感謝を忘れずに、2018年版の「チーム自分」を元気に運営していってもらいたい。

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