人間と時間

#01

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大人の時間はなぜ短いのか

年をとればとるほど、月日があっという間に過ぎていく。そんな「怪奇現象」に悩む大人はきっと多いことだろう。ついこの前正月だったのに、気づけば桜が散っていて、夏が来たと思ったら、紅葉の見頃が過ぎていて、え!もう除夜の鐘? 子供の頃の1年が「万里の長城」だとしたら、最近の1年は「歩道橋」くらいのものだ。年をとるわけである。同じ1年なのに、なぜ、これほどまで感じ方が違ってしまうのだろう。そんな疑問に答えてくれるのが、一川誠著『大人の時間はなぜ短いのか』である。

冒頭でさっそく、1年の感じ方の変化に関する「ジャネーの法則」なるものが紹介される。

同じ1年であっても、10歳の子供にとっては人生の10分の1であり、60歳の大人にとっては60分の1である。年齢に対する比が小さいほど時間が短く感じられるので、加齢によって時間が短く感じられることになるというのが、彼らの考えの要旨であった。<P14>

「なるほど!」と、いきなり納得して本を閉じそうになってしまったが、著者はこの説を「裏付けとなる実験がない」という理由で採用しない。直感的にはもっともらしい「法則」であっても、実験してデータをとってみると整合しない、ということは往々にしてあるそうだ。それではなぜ、時間の感じ方は変化するのか。詳細はもちろん本書を読んでいただくとして、ポイントだけをご紹介しよう。

1年という時間が長くなったり短くなったりするのは、一定のリズムで進む「物理的時間」と、その人の「感じられる時間」との「ズレ方」が変化するからだ。その要因のひとつが「身体の代謝」らしい。

ある時間の経過(たとえば1分)を早いと感じるか、遅いと感じるかは、実際の時計と「心的時計」の進み方の違いと考えることができる。実際の時計で1分経ったときに心的時計ではまだ45秒しか経っていなかったとしたら「もう1分!」と思うだろうし、逆に心的時計の針が1分15秒を指していたら「まだ1分!」と驚くだろう。そして、この心的時計の進み方は、「身体的および心的な活性度」に対応するというのだ。

つまり、身体や心が活性化しているときや代謝が激しいときには、心的時計が速く進み、場合によっては物理的時計よりも速くなる。他方、代謝が落ちているときは、心的時計がゆっくり進む。<P120>

身体的代謝は普通、加齢とともに落ちていく。それはつまり、

年をとるにつれ、時計を動かしている動力源のゼンマイがゆるくなっていく(…) <P121>

ということなのだ。

うーむ、なるほど。最近どうも次の日に酒が残るなあと思っていたが、まさかこの代謝の衰えが時間まで短くしていたとは。 二日酔いで1日が使い物にならない上に、1年まで短くなるとはダブルショックだ! それにしても、1年はあっというまに過ぎていくのに、会社のデスクでは時間がちっとも進まないのは、一体どういうわけだろう。その理由も本書にちゃんと載っているので、ぜひチェックしてもらいたい。

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