人間と時間

あまりにも身近で、普段はその存在について考えることもない「時間」。しかし、「時間とは何か」という問いは、古代ギリシャの時代から多くの学者・研究者が向き合ってきた難題中の難題です。
このコラムでは物理学、哲学、心理学、文化人類学といったさまざまな分野において時間をテーマとした書籍を取り上げ、その内容を紹介していくことで、人類の「未解決の難題」を複眼的に考察していきます。

人間と時間#14徒然草
イメージ「つれづれなるままに、日暮らし硯に向かひて…」からはじまる『徒然草』は、吉田兼好が48、9歳の頃に書かれた随筆である。50歳手前の働き盛りなのに「つれづれ(=何もすることがない)」なんて……と思うかもしれないが、そこは今から700年も前のこと。当時の平均寿命がおよそ30歳だったことを考えると、50歳手前は立派な老境だといえる。兼好自身、「四十そこそこで死ぬのが無難」とまで言っているのだから、何もすることがなくても不思議ではない。
人間と時間#13スロー・イズ・ビューティフル
イメージ「次にまいります3番線の電車は、途中駅混雑の影響で3分ほど遅れております。お急ぎのところ電車遅れまして、誠に申し訳ございません」 ため息をついてスマホを取り出し、「何してんだよ」と心の中でつぶやく。隣に並んでいるサラリーマンから舌打ちが聞こえる。毎日の生活で電車を利用している人なら、こんな体験は日常茶飯事だろう。電車やバスが遅れて嬉しい人はいない。それにしても私たちは、なぜ、こんなにイライラするのだろう。時間通り、計画通り、効率よく、なるべく早く……。そんな現代社会は私たちから何かを、人間としてとても大切な何かを奪ってしまったのではないだろうか。辻信一著『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社)は、そのことに気づかせてくれる一冊だ。
人間と時間#12失われた時を求めて
イメージ時間について考えるのであれば、プルーストの『失われた時を求めて』をはずすわけにはいかない。すこし大げさに言えばそれは、聖書を読まずにキリスト教を理解しようとするようなものだ。とはいえ、『失われた時を求めて』はフランス語の原文で3千ページ以上、日本語訳では400字詰めの原稿用紙で1万枚以上の大作。そう簡単に読めるものではない。でも読みたい。せめて、大体どんな話かだけでも知りたい。鈴木道彦著『プルーストを読む―『失われた時を求めて』の世界』(集英社新書)は、そんなわがままに応えてくれる一冊だ。『失われた時を求めて』の個人全訳を完成した著者が、重要なテーマや登場人物について紹介・解説してくれる。
人間と時間#11ためにならない話
イメージ私たちの日常は目的と手段でできている。金を稼ぐために働く。試験に合格するために勉強する。インスタにあげるために旅行に行く……。世の中の物事は必ず、ほかの何かの「ために」存在しているのだ。星新一のショートショートを読むと、そんな「常識」の怪しさに気づかされる。たとえばこんな話。
人間と時間#10生命はどう持続しているのか
イメージあなたが応援しているチームのことを思い浮かべてみてほしい。野球でも、サッカーでも、アイドルグループでもいい。そのチームを好きな理由は何だろう。「好きな選手やメンバーがいるから」というのは、ひとつ、ありそうな答えだ。しかしどんな選手もいつかは引退するし、場合によっては別のチームから嫌いな選手が加入してくることもある。それでも私たちは、ふつう、そのチームのファンをやめることはない。ファンとはいったい何なのか、というのは置いといて、このチームで起きているのと同じようなことが、実は私たちの身体でも起きている。
人間と時間#09「時間どろぼう」は何をぬすんだのか
イメージ『モモ』はおそろしい物語である。そこに描かれているのは現代の社会そのものだ。効率を追い求めて想像力を失い、他人を思いやる心を忘れ、「いま」を楽しむことのできなくなった私たちひとりひとりだ。
人間と時間#08LIFE SHIFT
イメージ「いま50歳未満の日本人は、100年以上生きる時代、すなわち100年ライフを過ごすつもりでいた方がいい」。そう言われて、あなたはどう思うだろう。喜ばしさの一方、そこはかとない不安を覚えるのが正直なところではないだろうか。『LIFE SHIFT』(リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著 池村千秋訳 東洋経済新報社)は、そんな私たちに、100年ライフを生きる勇気とビジョンを与えてくれる。
人間と時間#07時間と自己
イメージ「時間という現象は、私が私自身であることと厳密に一致する」。木村敏著『時間と自己(中公新書)』を紹介するコラムです。管理される時間から、自ら生み出し構築する「時間」へ。JMAMのお届けするWebマガジン『時間デザイン』
人間と時間#06時よ、とどまれ、おまえはじつに美しい
イメージ「時よ、とどまれ、おまえはじつに美しい」。 ゲーテ作 池内紀訳『ファウスト(集英社文庫)』を紹介するコラムです。管理される時間から、自ら生み出し構築する「時間」へ。JMAMのお届けするWebマガジン『時間デザイン』
人間と時間#05あなたにもわかる相対性理論
イメージ「相対性理論」という言葉を聞いたことがない人は少ないだろう。それがドイツ生まれの物理学者、アインシュタインによるものだということも。しかし、どんなものかと聞かれると「……」となるのが実情ではないだろうか。そんな方に手に取ってほしいのが茂木健一郎著『あなたにもわかる相対性理論』(PHP研究所)だ。「アインシュタインの伝記を読んで科学者を志した」と語る著者が、相対性理論の骨格とアインシュタインの魅力を、タイトル通りわかりやすく教えてくれる。ここでは本書にある「時間の遅れ」についてご紹介しよう。
人間と時間#04ゾウの時間 ネズミの時間
イメージ哺乳類の心臓は、その「主」の種によらず、20億回打つと止まる。こんな話が好きな人にぜひ読んでもらいたいのが、サイズという視点から生物に迫る科学読み物の大ベストセラー、『ゾウの時間 ネズミの時間』(本川達雄著 中公新書)だ。
人間と時間#03「時間」を哲学する ―過去はどこへ行ったのか―
イメージ過去はどこへ行ったのか? 21世紀の日本に、こんな疑問を持っている人がはたして何人いるだろう。このページを開いたのも何かのきっかけだと思って、10秒ほど考えてみてもらいたい。「どこへ行ったも何も過去は過ぎ去っているんだから、その記憶だけが頭の中にあるんじゃないの」といったあたりが、きっと、常識的な答えではないだろうか。これに対して本書の著者、哲学者の中島義道は「過去はどこへも行かない」と主張する。一体どういうことだろう。
人間と時間#02自分の時間 ―1日24時間でどう生きるか―
イメージこんなたとえ話がある。 ある朝ひとりの男があなたの前に現れ、お金の詰まったスーツケースを渡してこう告げる。「このお金をあなたに差し上げます。ただし、今日一日で使い切れなかった分はすべて没収します」。そう言われたら、誰もが必死になってこのお金を使い切ろうとするだろう。ではなぜ、私たちは、同じように消えてしまう「時間」を使い切ることなく、今日という日を終えてしまうのだろうか。
人間と時間#01大人の時間はなぜ短いのか
イメージ年をとればとるほど、月日があっという間に過ぎていく。そんな「怪奇現象」に悩む大人はきっと多いことだろう。ついこの前正月だったのに、気づけば桜が散っていて、夏が来たと思ったら、紅葉の見頃が過ぎていて、え!もう除夜の鐘? 子供の頃の1年が「万里の長城」だとしたら、最近の1年は「歩道橋」くらいのものだ。年をとるわけである。同じ1年なのに、なぜ、これほどまで感じ方が違ってしまうのだろう。そんな疑問に答えてくれるのが、一川誠著『大人の時間はなぜ短いのか』である。

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