私の時間デザイン

#02

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株式会社日本デザインセンター 原研哉氏あらゆる産業との多角的な接点、
そして企業や社会とのつながりを多く持つことで、
「爆発的な2秒」の創造性を生み出す。

社会を広く深い視点から見据え、シンプルさの中に潜むデザインの可能性を追求する原研哉さん。五輪や万博など、世界に通じる日本らしさの発信で類まれな才能を発揮する一方、出身大学では後輩の育成にも携わる。あらゆる産業との接点を通じて社会とのつながりを深めているという、原さんの「時間デザイン」とは。

原 研哉(はら・けんや)

デザイナー。1958年生まれ。デザインを社会に蓄えられた普遍的な知恵ととらえ、コミュニケーションを基軸とした多様なデザイン計画の立案と実践を行っている。日本デザインセンター代表。武蔵野美術大学教授。無印良品アートディレクション、代官山蔦屋書店VI、HOUSE VISION、らくらくスマートフォン、ピエール・エルメのパッケージなど活動の領域は多岐。一連の活動によって内外のデザイン賞を多数受賞。著書『デザインのデザイン』(岩波書店刊、サントリー学芸賞)『白』(中央公論新社刊)は多言語に翻訳されている。

創造性の爆発で無限の
時間を生み出す

原さんがお考えになる「時間デザイン」についてお聞かせください。

 時間軸は過去、現在、未来と、一直線で捉えがちですが、1と2、3と4の正数の間に存在する小数を考えてみると、 そこに無限の数があるということに気づきます。そう考えると、時間は無限に湧き出してくる。3時間考えても答えが出なかった問いに、2秒でひらめくことがありますが、時間とつきあうヒントがそこにある気がします。

 「時間のデザイン」とは、自分にとって圧倒的にスパークする「爆発的な2秒」をどう招き寄せるかです。この「爆発的な2秒」を呼び寄せるために、人との接触や経験をいかに活用できるかでしょう。

その2秒を引き出せるかは、接点の多さがカギになると。

 同じ売上規模でも、7000アイテムを自社管理する会社と、3アイテムのみで展開する会社では経営戦略が全く異なります。僕はその違いを直感的に受け止めつつ仕事をしていますが、それもあらゆる産業との多角的な接点があるからです。独創的なアイデアを生み出すためには視野の広さも大事だと思います。

世界は「遊働」の時代。
ONとOFFの緩急をつけて創造性を高める

日本の産業は今後どう変化し、働く人の意識や時間のとらえ方はどう変わっていくのでしょうか。

 僕が今、考えの基底においているのは「ツーリズム」です。1965年の東京五輪のときは約1億人を少し超えるくらいの人々が海外旅行をしました。現在は10倍以上の約12億人、2030年には18億から20億の人が旅をすると言われています。延べ人口ですが、実に世界人口の4分の1相当が移動する時代になるのです。

 訪日旅行者が2030年に4千万人に達したら、何が起こるでしょうか。日本という国が千数百年かけて蓄積してきた美意識、文化資源は、言わば「質屋」に入ったままのような状態です。サブカルチャーがとみに注目されていますが、棚上げされたハイカルチャーも大変貴重な資源です。産業としてみても膨大な過去を古くさいと無駄にせず、資源化していくことに、日本の可能性があるのではないでしょうか。

郊外やリゾート地に住みながら仕事をする人も増えてきました。

 僕自身、一週間休みを取ったとしても、必ずどこかで仕事に集中している状況を入れていくと思います。いい仕事ができた充実感はいかなる休息にも代えがたい活力を生み出すので、いい仕事をしないと安息が得られません。もちろん走り続けるのは危険です。要は緩急をつけることが大事だと思うのです。脳はある瞬間、時速200kmで走っていると思えば、急に止まったり、また歩きだしたり、緩急つけて動くものなのです。仕事と休息という、いわばONとOFFではなく、緩急をつけながら行く。そして先ほど述べたような脳内の「爆発的な2秒」をどう生み出していくか。それがカギになるのではないでしょうか。

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