生命の目盛り

#07

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一日は12時間×2なのか、24時間なのか?

筆者は昔から、24時間時計のファンだ。普通の時計の時針は文字盤を12時間で一周する。対して24時間時計は時針が24時間で1周する。24時制はしばしば軍事時間と呼ばれ、それを表示する24時間時計は、パイロットや軍人たちに好まれてきた。ちなみに筆者が24時間時計を好む理由は、時針が1日に一回転しかしないためだ。ゆったり動く針を見ていると、時間に追われている気がしない。

そもそも1日は、なぜ24時間なのか。諸説あるが、エジプト文明に大きな影響を与えたシュメール人が、12進法を使ったためとされる。そのエジプト人は、1日を24時間に分け、昼を12時間、夜を12時間とした。加えていうと、日の出から日没を10に分け、そこに朝と夕方を加えて12時間としたらしい。しかし計算が煩瑣(はんさ)だったのか、紀元前1300年ごろには、昼が12時間、夜が12時間と分かれたようだ。ちなみにエジプトの時制は、江戸時代の日本の時制と同じで、季節によって昼と夜の長さが変わる不定時制だった。

では、24時間表示はいつ出現したのか。概念としては紀元前からあったが、普及したのは機械式時計が広まって以降であり、より具体的に言うと1884年以降だ。この年に24時制の源と生まれ、以降、イタリア、フランス、デンマーク、ギリシャなどが、1日を12時制ではなく24時制で表示するようになった。1日を示す時間の単位が、12から24に変わっただけと思うなかれ。24時制の導入は、人々の生活を大きく変えた、といえる。昼と夜をひとまとまりの単位と考えるようになった結果、人々は1日を長くとらえるようになったのである。

もっとも、24時間制の広まりは、電球の普及があってこそだろう。1880年前後に、各国の技術者たちは電球の量産に成功し、やがて各都市は、夜であっても、昼と見まごうような明るさを得られるようになった。となれば、強いて昼と夜を分ける必要はなくなる。電球の普及は、日が昇ったら起き、日が暮れたら寝るという人々の習慣を変え、それは24時間制の普及という形で世界に広まった。

ちなみに日本は24時制ではなく、12時制である。午前は零時から12時まで、午後は1時から12時までとする時刻制度が、1872年の旧暦11月9日に発令され、いまだに変わっていないのである。これは英語圏の国もほぼ同様で、アメリカもイギリスも12時間制だ。ただし日本の場合、列車の時刻だけは、1942年に24時間制となり、今なお不変である。

1日を12時間×2とみなすのか、24時間とみなすのか。たかがそれだけの違いだが、その境目にあるものは大きいような気がする。12時間と考えたほうが効率よく働けそうだが、24時間と考えたほうが、1日をゆったり過ごせる気持ちがする。事実、一日を24時間とみなすヨーロッパの国々は、夜遅くまで街がにぎやかだ。日本も景気を良くしたければ、プレミアムフライデーを導入するよりも、1日を24時制にしたほうがいいのではないか、と思ったりする。

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広田雅将(ひろた・まさゆき)
時計専門誌『クロノス日本版』編集長。1974年大阪府生まれ。サラリーマンを経て2004年からフリーのジャーナリストとして活動。2016年から現職。朝日新聞&、GQ JAPANなどに連載多数。

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