未来百景

#03

天使のくれた時間

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クリスマスの朝、気ままな独身生活を満喫する金融会社の社長ジャック・キャンベルが目を覚ますと、そこには、13年前に別れた恋人ケイトが眠っていた。寝室のドアが開き、プレゼントを手にした女の子が大はしゃぎでジャックに言う。「クリスマスおめでとう、パパ!」。もしもあの時、別の道を選んでいたら…。ニコラス・ケイジとティア・レオーニの演技が光る大人のファンタジー『天使のくれた時間』は、誰もが一度は考える「If」を表現した作品だ。

監督のブレット・ラトナーはこの作品を、往年の名作『素晴らしき哉、人生!』をモチーフにしてつくったらしい。たしかに、クリスマスという舞台設定や、「金(キャリア)」と「愛(家庭)」のどちらが大切かというテーマにおいて、両作品は共通している。とはいえ、異なるところもある。『素晴らしき哉』の主人公ジョージ・ベイリーが一貫して「愛」を選択しているのに対し、ジャックは「金」を選択した過去を持つ。ラトナー監督は、なぜ彼に一度「誤った」選択をさせたのだろう。

「クリスマスのファンタジー」といえば、もうひとつ、思い出す作品がある。『クリスマス・キャロル』だ。主人公のエブニゼル・スクルージはたった一人の友人の葬儀の日でさえ商売を休まなかった「貪欲ながりがり爺(じじい)」(『クリスマス・キャロル』ディケンズ著 村岡花子訳 新潮文庫)。そんな彼が、過去・現在・未来のクリスマスの幽霊によって、「もし生きている人間でクリスマスの祝い方を知っている者があるとすれば、スクルージこそその人だ」(同書)と言われるまでに心を入れ替える。このギャップが、170年余りの時を超えて私たちの胸を打つのだ。

未来と過去がつながっているのは間違いない。人生がこれからどうなっていくかは、自分がこれまでどう生きてきたかと無関係ではありえないだろう。しかし、その二つをつなぐのは、アメリカのハイウェイのような一本道ではない。

「人の進む道は、それを固守していれば、どうしてもある定まった結果にたどり着かなくてはならないのでしょう。それは前もってわかることでございましょう。けれども、もしその進路を離れてしまえば、結果もかわるのじゃありますまいか。…」(同書)

未来の幽霊に嘆願するスクルージのセリフは、映画の終盤で、ケイトを追いかけて空港へ向かうジャックの姿と響きあう。おそらく間違いない。ジャックのモデルは、『素晴らしき哉』のジョージ・ベイリーではなく、エブニゼル・スクルージだろう。

生きるということは選択するということだ。私たちは常に、現在という「岐路」に立っている。正しい道ばかりではなく、どんな人でも一度や二度は誤った道を選んでしまうものだろう。あえて言うならば、そこにこそ人生の妙味がある。きっと「天使」は、ただ一度の過ちも許さないほど、狭量ではないはずだ。かの孔子も言っているではないか。「過ちて改めざる、これを過ちという」

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