人間と時間

#01

バック・トゥ・ザ・フューチャー

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タイムトラベルをテーマにした作品は数多くあるが、昭和の終わりから平成の初めに青春時代を過ごした人であれば、真っ先に思い浮かぶのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー(以下BTF)』だろう。1985年の「現在」から、1955年、2015年、そして1885年へと、時代を行き来する冒険に誰もが心を躍らせた。2015年10月21日にはBTFの「未来」がやって来たと話題になったが、現実はやはり、この名作には追いつけなかったようだ。作中に出てくる「乾燥機能付きの服」は発売されていないし、「雨の上がる時刻を秒単位で予測する天気予報」もない。そして何より、自動車はいまだに地面を走っている。

自動車が空を飛ぶパートⅡに限らず、BTFでは「車」が重要な役割を果たしている。パートⅠでは主人公のマーティーが車にはねられることで過去の世界にズレが生じるし、パートⅢでは暴走する馬車から助けた婦人と科学者のドクが恋に落ちる。そもそも、この映画のアイコンであるタイムマシンの「デロリアン」も車だ。時間を行き来するというだけなら車ではなく、人が入れるカプセルや、時計をモチーフにしたものでもよさそうだが、なぜ、車なのだろうか。

ひとつの理由として、当時のアメリカが世界で最大の車社会だったことが挙げられるだろう。高校生のマーティーが車を運転するシーンがあることからも、アメリカ人にとって、車がいかに身近な存在であるかがうかがえる。観衆の共感の得やすさ、ひいては映画のマーケティングという面からも、タイムマシンが車であることには必然性があったように思う。ちなみに、1980年代といえば日本車がその品質の高さとリーズナブルな価格によって大躍進した時代である。パートⅢで、故障した部品を見た1955年のドクが「やはり日本製だ」と言ったのに対し、すかさずマーティーが「日本製は最高だぜ」と答えるシーンなどは、そんな時代性が表れていておもしろい。

そして、考えられるもうひとつの理由が相対性理論だ。この作品がタイムトラベルの原理として相対性理論を参照していることは、ドクの飼い犬が「アインシュタイン」という名前であることからも推察される。特殊相対性理論によれば、物体が空間を高速で移動すると、その物体の内部では時間の進み方が遅くなるらしい。「デロリアン」が時速140㎞に達することでタイムトラベルを誘発するのは、恐らくこのことを意識しているのだろう。感覚的には無関係に思える「時間」と「空間」だが、実際は密接に関連しているため、「時間」を移動するには、とにかく「空間」を移動する必要があったのだ。それが道路であろうと、空中であろうと。

ところで、監督のロバート・ゼメキスは、スティーブン・スピルバーグとの深い親交が知られており、BTFの製作総指揮もスピルバーグがつとめている。BTFの公開される3年前には、そのスピルバーグの『E.T.』が世界中で大ヒットを記録した。『E.T.』には自転車が空を飛ぶ有名なシーンがあるが、もしかするとそれも、車が「時空」を飛び回るこの作品の着想に一役買っているのかもしれない。

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ブルーレイBOX: 6,500円(税抜)/ DVD-BOX :4,500円(税抜)≪各4枚組≫
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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